下落率39%が意味するもの

 歯止めを失ったように、ずるずると下がるばかり。「このまま株と一緒に“あの世”行きか」。2日午後、都内の証券会社のカウンターをのぞいたとき、こんな声が聞こえてきた。個人投資家の嘆き節である。


 たしかに、株式相場は、目を覆うばかりの惨状だ。しかし、陰極まれば陽転するのがこの世界。昨年7月9日に付けた高値からの日経平均の下落率はすでに39%に達した(10月2日現在)。相場の分岐点を探るうえで、この39%は注目すべき一つのポイントになる。


 東京証券取引所が戦後取引を再開したのは1949年(昭和24年)5月。その後、数多くの暴落劇を繰り広げてきたが、昨年7月高値1万8,261円高値からの凄まじい下げ相場も証券史に刻まれることのは間違いない。


 戦後の主な下落相場で最も大きな亀裂が入ったのは2000年4月12日の2万833円から03年4月28日の7,607円までの局面。下落率は実に63%を記録した。これに続くのが1949年9月〜1950年7月までの下落率51%に及んだ下げ相場である。そして、1989年12月末に記録した大天井3万8,915円から90年10月1日の2万221円安値までのバブル崩壊相場でマークした下落率48%が戦後第3位。


 これらを含め、戦後19回に及ぶ崩落相場を振り返ると、興味深い事実が浮かび上がる。19回の下げ相場の平均下落率は31.3%。下落月数は13カ月だ。


 さらに、89年末にかけてのバブル相場の出発点となった87年以降で洗い直すと、下落率は39.9%。そして下落月数は16カ月だ。昨年7月以降に表面化した今回の下げ相場の下落率39%は、ほぼその水準に達し、下落月数も15カ月目に入り、「平均値」に近づいた。


 もう一つ、見逃せないのは株価の水準である。すでに日経平均は45年移動平均線の1万1,500円台を割り込んで、50年移動平均線の1万500円台を射程圏にとらえている。


 しかし、この1万500円台はチャート上、「最後の砦」ともいえる極めて重要なゾーン。04年〜05年夏場にかけてのボックス相場の下限が1万505円(04年5月安値)と見られているからだ。


 東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は2日、68.4%と、9月16日の69.6%を下回り、再び売られ過ぎ局面に突入した。騰落レシオは今年1月22日に52.8%という驚異的な低水準まで落ち込んだケースはあるが、通常、50%台はよほどのクラッシュでもない限り記録しない数字で、だいたい60%台が下限でそこから株価は反転する。


 こう見てくると、株価は短期、中期、長期のいずれからチェックしても、「下げの終着点」に接近しているようだ。いったん底打ちすると、地面に叩きつけたボールが大きく跳ね上がるように相場も勢いよくリバウンドする。これまた、戦後の暴落相場の経験則だ。


 景気・企業収益などファンダメンタルズは厳しい状態が続いているものの、それを十分に織り込んだとき、株価は激変する。そろそろ、それに備えなければならない。

VIX(Volatility Index) 
 日本語では恐怖指数とか恐怖心理指数と呼ばれている。正常時では10〜20の範囲内動きであるが、取引されているオプション価格が高くなるとし数値が上昇して、30を超えたらパニック状態で、40を超えたらメガボトム(大底)という。この指数はシカゴオプション取引CBOEが1993年に導入したもので、SP100とSP500のオプションをベースにした指数があるが、一般にはSP500のオプションをベースにしたものが使われている。