引き続き、世界的な株価上昇基調に変化はない。最近、株価が大きく下落しているようなイメージがあるが、実際には、年初から3月23日まで、S&P/シティグループ世界株式指数(ドルベース、配当込み)は3.5%、東証株価指数(TOPIX)は3.6%、それぞれ上昇している。2月末以降の世界的な株価下落は、健全な調整の一環として、むしろ歓迎したい。一本調子の上昇相場が長続きしないのは、1999〜2000年のITバブルの例にあるように、市場の常識である。S&P/シティグループ世界株式指数は、2006年6月の安値から2007年2月の高値までの8ヶ月間に27.1%も上昇した。今回の世界的な株価調整のきっかけになった中国株は2006年に79.1%も上昇している。このように、今回の下落は起こるべくして起こった当然の調整であると言えよう。自律調整が起こったことで、世界的な相場上昇が長続きする可能性が高まったと考える。

 米国経済悲観論の台頭による株価下落は、もはや毎年の恒例行事となっている。昨年も5月をピークとして6月にかけて、S&P/シティグループ世界株式指数(ドルベース、配当込み)は12.7%下落した。同様に、円ドル為替相場は、4月から5月にかけて8.3%円高になった。当時も、「米国の住宅バブルが崩壊して、個人消費が大きく減退する」など言われたものである。しかし、それらは結局杞憂に終わった。根拠に乏しい景気悲観論で株価が下落した時こそ、絶好の買い場である。多くの個人投資家は賢明であり、円キャリー取引、中国株下落、サブプライムローンなどの些末な懸念材料には左右されず、3月第1、2週合計で1兆円(出所:東証)と積極的に買い越している。

 米国経済は、順調に拡大している。2007年1月の個人所得は前年同月比5.3%増加している。2006年には個人の金融純資産は2兆2000億ドル(約250兆円)増加した。所得と資産が増加したため、個人消費は同5.5%増と堅調である。サブプライムローン延滞率悪化が実態経済に与える影響は小さいと見られる。サブプライムローンの残高は約8000億ドル(約90兆円)であり、2006年末のモーゲージ全体の6%(件数は14%、出所:MBA)と小さい。家計の総資産は68兆9000億ドル(約8000兆円、出所:FRB)、金融純資産は28兆8000億ドル(約3300兆円)と比較すると無視できる規模である。家計部門の自己資本比率は80.7%もある。また、モーゲージ全体の延滞率は4.95%に過ぎない。

 日本株は決算発表が集中する4−6月期が最も上昇率が高い季節性を持つ。よって、従来通り、3月の調整を経て、日本株は4−6月期に本格的に上昇するとの見方に変化はない。ただし、日本株全体に対して楽観は禁物だ。年前半は、目立ったリスク要因がなく、TOPIXは4−6月期に再度1800台に達することは十分ありえよう。しかし、年後半の株式市場は極めて不透明である。TOPIXのフェアバリュー推計値は、2007年12月末1750、2008年3月末1800である。リスク要因は、以下の2つである。

 多くの経済指標は昨年後半が、景気の勢いのピークであったことを示唆している。たとえば、鉱工業生産指数(前年同月比)のピークは7.4%(2006年10月)であり、2007年1月に4.0%まで低下した。1月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品)は前年同月比0.0%となり、2月以降、再度、前年同月比下落に転じる可能性が高い。

 2007年の選挙において、与党が参議院過半数を確保するには、自民党単独で51議席前後の獲得が必要と思われる。現在、自民党は45〜50議席獲得するというのが実力ではなかろうか。仮に、参議院選挙において与党が敗れるということは、国民は公共投資削減、規制緩和路線を否定したということになりかねない。外国人投資家にとっては、かなりネガティブな材料になろう。

 先月のコメントで、「昨年の今ごろは多かった世界景気悲観論者は、現在ではほとんど見られなくなってしまった。よって、世界景気敏感株は昨年ほどの上昇は期待しづらいと思われる」と述べた。しかし、最近は世界景気悲観論者が増えているようなので、朝令暮改で恐縮だが、再度、世界景気敏感株の買いを強く推奨したい。投資戦略としては、鉄鋼(新日本製鉄住友金属工業)、商社(三井物産住友商事豊田通商)、非鉄(住友金属鉱山)、機械(コマツファナックジェイテクト)、自動車(いすゞ自動車ヤマハ発動機)、電子材料・電機(信越化学工業キヤノン)などを推奨する。