2007-04-01
え?
エイプリルフールか。
慰安婦問題を巡る本社の報道について
4月1日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)の早版に、次のような社告が出ている。日本の良心を代表する新聞社の社長らしい潔い進退だ。

1930年代から第2次大戦中にかけて戦地で兵士の相手をした、いわゆる慰安婦について、本社は1992年1月11日付第1面の「慰安所 軍関与示す資料」という記事において、防衛庁図書館に保管されている旧日本軍の通達に、軍が慰安所の設置を指示した事実が記載されているとの事実を報じました。この記事は正確でしたが、それに付けた「解説」において
従軍慰安婦 一九三〇年代、中国で日本軍兵士による強姦事件が多発したため、反日感情を抑えるのと性病を防ぐために慰安所を設けた。元軍人や軍医などの証言によると、開設当初から約八割は朝鮮人女性だったといわれる。太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は八万とも二十万ともいわれる。
と記述しました。ここで「挺身隊」と記されているのは「女子挺身隊」のことですが、これは工場などに戦時動員する制度であり、慰安婦が女子挺身隊として徴用(強制連行)された事実はありません。したがって「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」という事実もなく、これは解説記事を書いた植村隆記者(現・東京本社外報部次長)の事実誤認によるものです。

この記事は、今から15年前のものですが、宮沢喜一首相(当時)の訪韓5日前に報じられて日韓関係に大きな影響を与え、1993年に官房長官談話で政府が謝罪する原因となりました。それが歴史的事実として定着したため、今年3月に安倍晋三首相が「軍が慰安婦を強制連行した事実はない」とコメントしたときも、海外メディアから「歴史の隠蔽だ」などの非難が集中しました。

これに関して、混乱を招いた責任は本社の報道にあるとの指摘を複数の専門家から受けました。私どもはそのような因果関係はないと考えますが、結果として誤解を招いた可能性もあるため、事実関係をあらためて明確にすることが必要だと考え、社内に「慰安婦問題検証委員会」を作って検討を進めてまいりました。その結果、前述のような結論に達したものです。

社説でもたびたび主張したように、私どもは慰安婦が強制連行されたかどうかは本質的な問題ではないと考えておりますが、そうした意見以前の問題として、事実関係について誤解を招いた責任は免れません。

とりわけ海外メディアに誤解が広がっていることについての責任の重大性を考え、ここに当該記事を執筆した植村記者を諭旨解雇処分とするとともに、私が代表取締役社長を辞すことによって、全世界の報道機関に事実関係の再検証を促す次第です。

これを教訓とし、本社は今後とも中立・公正な報道に努める所存です。ご理解を賜りたく存じます。

朝日新聞社 代表取締役社長 秋山耿太郎



慰安婦」証拠ないのが当然 大村袈裟嘉(山梨県山梨市、79歳)
従軍慰安婦問題を巡る安倍首相の発言が、内外に波紋を広げている。狭義の強制性を問題にして証拠と証人が出てこないことを強調しているようだが、敗戦時の旧日本軍の厳しい 証拠隠滅工作に従事させられた私には、証拠がなくて当然と思えるのだ。
私は16歳で海軍少年兵に志願し、18歳の夏に航空隊高等科演習生で敗戦を迎えた。実戦部 隊ではなかった私たちの学校でも、秘密性が高い「軍機」や「軍極秘」はもちろ秘密 性が低い「秘」の修身の教科書さえ全部回収し、練兵場の隅に掘った穴で3昼夜燃やし続けた。 こうした証拠隠滅の指示や緘口令は、旧日本軍のあらゆる部門で出たはずだ。したって、 戦地での性や人権が絡む慰安婦問題で、証拠や証人が出てこないのもやむを得まい。この問題では、日本政府を提訴したり米議会で証言したりした被害者の証言を重要視すべ きで、安倍首相の姿勢では被害者はもちろん、各国からも理解されないだろう。ひいては 友好外交に水を差し、懸案の拉致問題にも悪影響を及ぼしかねない。日本の戦後処理はまだ終わっていない。この際、安倍首相が歴史認識を改めることを切望する。