前日の米国株下落を受けて調整やむなしとの見方は多かったが、下値は意外に固かった。また、調整色を強めていたアジア市場が軒並み堅調に推移したことで、投資家心理を好転させたとみられる。とはいえ、積極的に上値を買い進む気配はなく、売り方による買い戻しの色彩が濃いのも確か。電池関連や原発関連などが目先筋の資金を集めて賑わいをみせたが、局地的な感が強く相場全体を牽引するまでには至っていない。また、市場エネルギーの低迷は深刻で、東証1部の売買代金は3営業日連続で減少の1兆9890億円に落ち込み、5月27日(1兆7845億円)以来の2兆円割れとなった。日経平均心理的な節目である14500円近くで戻り待ちの売り圧力が強まると思われるだけに、現状の売買代金では6月6日につけた直近の戻り高値(14061円)を更新するのは厳しいと思われる。

 東京市場には楽観ムードが漂う一方で、外部環境は厳しさを増しているようだ。米国市場では、5月卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回り半年ぶりの高水準になった一方、5月住宅着工件数が17年ぶりの低水準、5月鉱工業生産は2ヵ月連続のマイナスになりスタグフレーションが警戒される。また、ゴールドマンが米銀の貸倒損失や資産評価損は2009年1Q(1-3月期)まで続き、今後さらに650億ドル(約7兆340億円)の増資が必要となる可能性があると指摘するなど金融不安も拭えない。日本株の相対的な強さは認めても、上値を買い進める明確なファンダメンタルズは乏しいだけに、いつ調整に転じても不思議でない。